<< 2008年3月県議会での一般質問の主な内容 >>


はじめに

 荒井知事は昨年春、新しい知事として、『奈良「新・都」構想』というロマンあるマニフェストを掲げて登場されました。その後、「東奔西走」の奮闘をされている様子も評判良く聞こえてきます。

 

@ 医師不足の解消と救急医療体制の具体策のために

 昨年12月、県議会の文化講演会において、県立医科大学の吉田修 学長の講演「今、医師に求められていること 医学教育の立場から」の題目にて聞かせていただいた。

 医師の倫理や人格、知の三角形なる、知の創造(学術研究)・知の継承(高等教育)・知の活用(地域貢献)と相関相乗について、あるいは県立医科大学の「より広く人類の福祉と医学の発展に寄与できる人材を育成・・・」という教育目標は、アドミッションポリシー(※入学者受け容れ方針)のひとつとしての「地域医療に貢献する熱意を持ち、国際的な視野で考え、行動できる人・・・」を求めるという内容だったと記憶いたしております。

 奈良県立医科大学附属病院は、わが奈良県民の健康・安全のための医学・医療の中核をなすセンターの存在であることに改めて感じ入ったところではありますが、こんにち、県民の医療に願う強い思いというものは、救急あるいは妊産婦に係わる昨今のトラブルなどの経験から、きわめて深刻であります。「医は仁術なり」の倫理を改めて問い直すことも当然ながら、あらためて県政の重要課題として、医師の偏在・医師不足への対応、医師の勤務環境の改善、人材養成の支援・奨励など、充実策が緊急肝要であること自明になっております。

 先般、中央社会保険医療協議会(中医協)において診療報酬の改定がなされ、勤務医の処遇改善などが厚生労働大臣に答申され、国にあっても種々対策が講ぜられているようであり、勿論、医療問題は国を挙げての課題ではありますが、わが奈良県にあっても、全国の先を行く積極対策を求めたいものです。
 例えば、公共病院は種々性格上、経営の困難があるにしても、救急患者をすべて受け容れるべき病院体制をむしろ基本的に考え、確立すべきであります。救急患者の発生の具体的実情を的確に捉える、とりわけ年末年始には救急発生は多いようでありますが、これら1日最多の救急発生件数に照応した医師の確保、そのための人材養成をどのように進めていくべきか考えるべきです。特に、産科・小児科・麻酔科の医師不足、夜間の急患体制の医師布陣の強化など、医師の補強計画を明確にさせての対策を求めます。

 また、周産期医療ネットワークの整備も急がれてはおりますが、助産師も包含した本来機能すべき地域の医療体制づくりを進めるべきであり、助産所の存続、新規開業を支援し、「お産難民」を救うべしであります。

 なおまた、県民・国民すべてが自らの健康・安全に備えて、開業医診療所の協力体制のもと、主治医や掛かりつけ医の登録などを行なう制度を設けて、医師と県民とが日常的に繋がった救急医療の万全体制など考慮し、推進しては如何でしょうか。知事に一層の積極性ある具体策を尋ねる次第であります。

 

A 産業・観光対策のための教育のあり方について


 「経済活性化」 口癖の如き願求であります。景気は上昇気流にあり、というデータは示されてはいても、農山村の中小零細企業にはご縁が遠いと言わざるを得ません。

 知事は、今議会に県の経済活性化に向かって、企業立地促進条例と中小企業振興基本条例を提案され、また平城遷都1300年祭イベントに合わせながら、大型観光キャンペーンと絡めたVIPクラスのホテルの誘致などによる、奈良を国際的舞台にとアッピールされているビッグな御努力は誠に嬉しい。成果を大いに期待しているところです。

 さて、ハイテクやベンチャーなど近代科学に目を奪われがちな経済社会ではありますが、伝統ある地場産業なしに経済も生活も成り立ちません。すでに私は、中小零細な経営者の組織化に努め、経営者との交流の中で、経営者の足腰論や地場産業の学校教育との関係を提起してまいりました。つまりは、地域経済の中で論じられている、「地産地消」の提起に通ずるものでありますが、学校において、わがふるさとの地域に何が伝統・自慢なのかという教育であります。

 モデル的な教育実践校はありますが、農家でありながら田づくりを知らない、産地産業である家業を手伝う経験もない、ふるさとの主な産業がどんなものなのかを知らない。多くはそんな子どもたちの教育現実であります。このような状況の中で、地場産業の振興策を外に向かって発信してみたとて空砲でしかありません。小学校・中学校、高校においても、国語や社会科の授業に、地理も歴史も商工業・農業・産業、そして、観光・名所史蹟などを見聞・経験させる参加型授業が大切だということであります。さらには、郷土の貢献者・苦労人を知り、郷土の遺産・財産を継承してもらいたいものです。

 わが子や孫へのシッカリとした郷土授業を確立させることも極めて肝要ではないでしょうか。都市へのあこがれ、農村離れの格差社会の構造に抵抗するためにも、郷土の産業振興・観光振興などについての学校教育方針を教育長にお尋ねします。「ふるさとは誰にもある。ふるさとの話をしよう」という都会暮らしだけの世相にならぬように、むしろ「ふるさとを護ろう ふるさとを拓こう」という会話の拡がることを願う次第であります。

 

B 産廃税の還流施策について


 産廃税の産廃処分場の集中する自治体への還流施策については、再三、要請を致してまいりましたが、産廃処分場の設置されている地域や自治体の苦渋がまったく理解されないままの県の対応であり、遺憾であります。

 排出抑制、減量化、再生利用等を促進する事業を当初の使途目的のみにこだわりすぎて、本来の産廃処理に係わる精神苦渋を直接こうむる関係住民への配慮がまったく欠けています。排出企業は社会的責任という立場での税負担者であり、処分場地域の住民・自治体は社会的被害者の立場に置かれているという相関関係をあらためて認識されたいものであります。

 かさねて、御所市をはじめ中南和の産廃処分場集中の自治体への、産廃税の還流的施策としての補助制度の確立を求め、知事の所見を求めます。

 

C 京奈和自動車道の整備・促進などについて


 御所市では、ふるさと再生のためにと町づくり委員会を設置し、その協議の中で「日本の古代ふるさとSLロマン紀行」と題し、JR和歌山線・王寺〜五条間の約36キロメートルに、観光SLを運行させることで、地域の活性化を図り、地域づくり、まちづくりを推進し、金剛・葛城山麓を「関西の憩いのオアシス」として、繁栄を創出する事業を、奈良盆地南西和の広域ネットワークで結び、推進しようという提起がなされ、このことについて、平成15年に、「知事への提言」として示されました。この提起に対し柿本知事の「近未来計画として、その趣旨は今後の施策の参考にさせていただく」旨の回答をなされています。
 この観光SLは、現在全国の14カ所で運行され、ジュニア世代に相当好評を呼んでおり、まちづくりの起爆剤になること必定と期待がこもっています。「大和路・葛城古道をSL邁進」をキャッチフレーズに、JR王寺〜五条沿線の各市町が連携し、推進できるような県の対処、支援を願う次第であります。
 全国各地はいま、観光文化の領域から、「町おこし」を推進する動きが強まっています。これが反映してか昨秋、臨時国会において、「観光立国推進基本法」が制定され、基本計画などで、観光立国への具体的な取り組みが本格化されるようであります。いま県が取り組まれている平城遷都1300年記念事業や、やまと21世紀ビジョンに呼応する観光振興策として、この「SL観光」を積極的に取り入れられるよう要望し、知事の所見を伺います。

 

D 部落解放と人権施策について


 本年は、部落解放に因縁する年になります。明治の初期、政府は日本の近代化のためにお布令を出しました。一つには「散髪脱刀令」です。チョンマゲを切り、刀は持ち歩かないということ。一つは「芸娼妓解放令」です。女性を卑しめる商いはいけないということ。そしてもう一つは、旧暦の明治4年8月28日の「解放令」です。賎称語は無くす、身分も職業も平民同様にすべし・・・ということです。

 このお布令に被差別部落民は大喜びです。しかし、差別した側の人々は不満です。そこで、「そのお布令は5万日、日延べになった。喜ぶのはまだ早い」という逸話か寓話なのか語り継がれてきたのです。あれから5万日、136年と326日が、本年の9月3日に到来するということです。悔しいことではありますが、部落差別は陰に陽に、今なお厳然と存在いたしております。差別の根深さを、逸話「5万日の日延べ」は、よくぞ示したものと言えましょう。

 行政書士や司法書士などの有識者による戸籍・住民票等の不正取得が横行し、改正戸籍法につながりました。そもそもなぜ、このような不正が起こるのか。その背景に部落差別があります。

 約30年前に、全国の被差別部落の所在地を一覧表にした図書が販売されました。「部落地名総鑑」といいます。その制作者は、探偵社を営んでいた時の経験から「身元調査の99パーセントは、部落出身かどうかを知りたい、というものだったので、このような本を作ったら売れると思った」と証言しています。30年を経過した今日もなお、インターネット上に被差別部落の地名の一覧が掲載されたりしております。未だ根強い部落に対する忌避意識、差別意識が渦巻いていることは明らかであり、有資格者らによる不正の事例は、氷山の一角と言わなければなりません。まだまだ厳しい部落差別があるということを御認識されたいのであります。  さて、こうした差別身元調査、戸籍・住民票等の不正取得事件に対する取り組みや、個人情報保護の気運の盛り上がりの中で、平成18年の6月、「探偵業の業務の適正化に関する法律(探偵業法)」が制定されました。この法律は、第1条に「探偵業について必要な規制を定めることにより、その業務の運営の適正を図り、もって個人の権利利益の保護に資すること」とうたい、第9条では「探偵業者は、…違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いられることを知ったときは、当該探偵業務を行ってはならない」としています。また、「探偵業を営もうとする者は、…、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会に」一定の事項記載した届出書を提出しなければならないことになっており、「公安委員会は、この法律の施行に必要な限度において、探偵業者に対し、その業務の状況に関し報告若しくは資料の提出を求め、又は警察職員に探偵業者の営業所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる」とも規定されているわけです。  法の制定から約2年近くが経過した現在、奈良県における探偵業者の実態はどのようなものか。私の入手した資料では、平成19年6月末に12業者であったものが、12月末には28業者と増大している実態があります。これをどのように受け止められているのか、問題になるようなケースがなかったのかどうか、今後どのように差別身元調査を防いでいくのかといった方針も含めて明らかにしていただきたい。付言するなら、大阪府では「興信所探偵社等規制条例」があり、差別身元調査の実態解明にも効果をあげていると聞きます。探偵業の街路看板などの存在は、今日的な人権文化の発揚の願いから見れば、如何なものでしょうか。是非とも県行政の、差別防止への強い決意を求めるものです。

 時代とともに差別はインターネットや電波に乗って拡がっています。いま、人権侵害救済法の制定が国政の俎上にあります。あらゆる差別撤廃のためにも、人権文化の向上のためにも実現を願います。

 憤怒に耐えないこととして、差別感情に差別助長を上塗りするエセ行為が横行しています。また、反対のための反対を唱え、部落解放の論理破綻を起こし行き詰まり、同和施策の成果の一面を捉え歪曲し、弱者たちにねたみを煽るなど、倫理から外れたネガティブ・キャンペーンも続いています。また、「俺は偉くなった。差別の問題は同和だけでない」と部落解放から卒業宣言する者など、被差別・反差別をめぐる思慮や行為はさまざまであります。

 わたしたちの部落解放同盟は、大和同志会の「わが徒の志士 決起せよ、自覚せよ、自治を強固にせよ」、水平社の「人間性の原理に覚醒し、人類最高の完成に向かって」という二つの流れの運動史100年を和合・継承し、いま「両側から越える」をモットーに、差別/被差別の壁を撤去すべき運動を展開してまいります。

 開館満10年となる水平社博物館は、近く21万人目の来館者を迎えます。また、本年は全国同和教育研究大会を奈良にて開催され、広く人権教育と人権啓発を力強く発信して頂きます。県、県教育委員会の御支援をお願いします。

県政にありて、同和問題や障害者問題をはじめ、あらゆる人権課題に係わる重要性をしっかりと捉えて頂いていると存じますが、あらためて現状認識は如何かお尋ねし、今日的な基本施策と課題解決の展望について、人権侵害救済法の必要性をも含めて、知事の所見をお伺いしたい。

 

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