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水平私考SUIHEISHIKOU

正志の『水平私考』 2015年9月号

残虐な行為による誘拐殺人が大阪府寝屋川市で起きた。楽しいはずの夏休みを奪われたのは中学1年生の少年少女。常軌を逸した犯行は理解し難い。香芝市でも7月、リサイクルショップ駐車場のトイレで11才の女児が誘拐された。しかも人が行き交う午後3時頃である。▼2004年11月17日、奈良市で小学1年生女児を誘拐し、女児の携帯電話を使い女児の画像を添付して、犯行メールを母親の携帯へ送った。翌日、残虐な姿で遺棄し、一ケ月後、今度は妹を誘拐すると脅迫メールを送る、類例のない世間を震撼させた事件。 犯人は年の瀬に逮捕、2006年10月10日死刑判決。犯人が死刑を望んだ為、控訴が取り下げられ永山則夫の事件以降、犠牲者1人での死刑が確定。 当時、犯人の国選弁護人を引き受けたのが、2011年9月にご逝去された高野嘉雄弁護士である。なぜ凶悪殺人者の弁護を受けたのかは、追悼集「更生に資する弁護」に、『極悪犯罪にいたる経緯、生まれながらの気質なのか、本人を取り巻く環境はどうであったのか、人格が形成されていく後天的要素』など犯罪の根を捉えるために、、、と、書き留められている。▼以来、全国では登下校時の子どもを見守る行動が地域で盛んになり、連れ去り事件は減少した感じも束の間、今は増加の一途。▼今日から新学期。小中高生の自殺者が突出して多い日との報道。 いじめられている子はいないか、阻害されている子はいないか、日常生活に悩みを抱えていないのか、教師も含めこどもと接する大人の器量が問われる。見て見ぬふりは不幸を招く。▼そして防災の日。自助力を養い「自分の身を守るのは自分」だと考える日。それと「助け合うことを想定する日」でもある。地域コミュニティも大きな支え。人間関係が稀薄化するのはよくない。寝屋川の事件では、安らぎを探し深夜徘徊をしているこどもの姿から、何を学ばなければならないのか、子を持つ親へのメッセージ、隠された子供の本心が窺える。治安のよい先進国トップの日本だが、子供達だけの夜遊びは安全ではない。 近し人々のふれあいの薄き世相をも、あらためて見た。

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