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水平私考SUIHEISHIKOU

正志の『水平私考』 2018年4月号

グリム童話に「ガリヴァー旅行記(全四篇作=小人国、大人国、空飛ぶ島の国、馬の国)」がある。作品は子供から年配者まで広く認知されている。一般的には、船員ガリヴァーを乗せた舟が嵐に巻き込まれ難破。たどり着いた先が小人の国。そこで王様から絶大な信頼を得るが、王様以上に人気が高まり王様は嫉妬、命からがら国を逃げ出す第一篇が有名▼全四篇作の意図は、小説に仮託して17世紀末から18世紀前期のイギリス政治や社会的風潮を批判。滑稽な人間の普遍的本性を痛烈な風刺で世に広げた傑作。著者はイギリス系アイルランド人のジョナサン・スウィフト(1667~1745)。スウィフトの格言に「大事件も大河の源流のように、ごく些細なことから発生する」「ひとつの嘘をつく者は、自分がどんな重荷を背負い込んだのか滅多に気が付かない。つまり、ひとつの嘘をつき通すために別の嘘を20個考えなければならないということを。」は知る人も多い▼この格言は、森友学園が8億2200万円の破格値引き(無いゴミを有る事とした捏造)で国有地の払い下げを受けていた問題と共通。ごく些細なこと=森友学園の籠池夫妻と安倍首相夫妻の個人的な関係から、大事件=財務省の「決裁文書改ざん・隠滅」へと発展。政と官のトップの言葉に、財務省理財局・財務省近畿財務局が「勝手に忖度・指示・暗黙の了解」なのか?謎のまま。企みを背負わされた担当者は、20個の嘘をトップのために考えなくてはならない苦渋の方向へ陥れられた。3月7日、払い下げに関わっていたとされる近畿財務局の男性職員が、遺書のような書き置きを残し神戸市内の自宅で自殺。不憫でならない。決して忘れちゃならん憤怒の事態である▼天の声により、民主主義を大きく傷つけた森友事件。国会では先日、衆参両院で「国政調査権」の一種の証人喚問が行われた。証人の佐川氏(当時の理財局長)は、政治家の指示はなく書き換えは理財局の単独であり、「値引きも妥当」との忖度証言。違和感を実感させる証言に、世論の怒りは収まりそうにない。国政調査権の発祥は1689年イギリス。時代はジョナサン・スウィフトの生涯と重なる。存命なら第五篇(責任転嫁の国)と題し、この茶番劇に厳しい風刺が描かれたであろう。水は上から下へと流れる摂理は、万人の知るところ。

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