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水平私考SUIHEISHIKOU

正志の『水平私考』2021年8月

水は我々の生活にも生命維持にも欠かせない命の源。人間の体内の約6割が水分と言われ、体温維持の調節や、栄養吸収、老廃物の排出など、様々な機能にも関わっている。体内の水分が一定量不足すると、脱水症状が起きて体温調整にも支障をきたす。暑い季節になると熱中症を発症し、命を落とす場合もある。反対に水を一気に過剰摂取し過ぎると体液や塩分濃度が薄まり、水中毒を引き起こす危険性もある▼植物は根や幹、枝を含む茎の部分、特に葉は多くの水分を蓄える。野菜炒めを作る前と出来上がりの量を見れば一目瞭然、水分量の過不足に気づく。乾燥に強いサボテンも約90%が水分からなり、空気中の水分とCО2と酸素の両方を上手に吸い込み酸素を排出。植物は動物の生命と環境を好循環させてくれる優れ物。ただ、気候(四季)や環境に合わせて進化しているとは言え、キャパシティが限界を超える異常気象には勝てない▼水の元となるのは海(地球上の水の約97%)。太陽の熱で暖められた海面から水蒸気が沸き上がり、雲となって雨を降らす。この雨を蓄えられるのが山(森林)。日本は山に恵まれているが故に、水にも恵まれている。富士山の湧き水には、水質調査で100年前に降った雨が濾過されているデータもあるという▼雨・風・熱・雪・噴火に耐えてきた「樹海取り巻く富士山」。その静岡県熱海市で7月3日、大規模土砂災害が起きた。発生当初は豪雨(2日間の総雨量約400ミリ)により、土石流が発生したとの推測が、どうやら違法開発(申請をはるかに上回る)による盛土が原因(人災)だった。近年、台風やゲリラ豪雨・線状降水帯災害では「観測史上初・100年に一度・記録的」など毎年耳にする▼日本で最も雨の多い場所として知られる大台ヶ原(奈良県吉野郡上北山村から三重県多気郡大台町)。年間降雨量は5000ミリ、過去には1日で東京の1年分の雨が降った記録あり。何十万年も自然の猛威に耐えて来られたのは自然が作り出したからである。人為的に山を削ると水脈は変わる。申請と中身の違う違法開発、自然と人間をナメタ不埒者によって多くの方々の尊い命が奪われたのである。地理的自然の恩恵も逆らえば仇となる。恵みと恐怖、豪雨と温暖化も表裏一体。天候をコントロールすることなど不可能。如何に自然に逆らわずして人間と共存できるか、改めて健全な水循環の重要性を考えてみよう。今日(8月1日)は水の日、水の週間の始まりです。

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