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県政報告KENSEI-HOUKOKU

9月一般質問。南部・東部地域、薬業政策について県政を質す

川口正志県議は9月28日、県議会9月定例会本会議で〈1〉南部・東部地域の振興と交流の促進〈2〉漢方のメッカ推進プロジェクト〈3〉薬事研究センターのあり方の3項目について一般質問し、荒井正吾知事、吉田育弘教育長がその質問内容に答えました。

 

〈1〉南部・東部地域の振興と交流の促進について

川口:奈良県美しい南部・東部地域を県と市町村が協働して振興を図る条例の理念の実現に向けた知事の更なる意気込みと、今後の取組方針について、伺いたい。

知事:①私は就任以来、南部・東部地域の振興に全力で取り組んできました。主な取り組みをあげると、紀伊半島アンカールートの整備、南和広域医療企業団設立、ドクターヘリの導入、広域消防組合の設立、御所インターチェンジ周辺産業集積地の整備、フォレスターアカデミーの開校、そして、南部東部振興監の配置などです。

②奈良県は近年まで、大阪のベッドタウンとして発展し、人口は80万人から140万人にまで増えました。その人口の多くは県の北西部に集中する一方で、南部・東部 地域の人口は減少し続けてきました。

奈良県が一体感を実感できる県になるためには、南部・東部地域の振興が必須です。昨年11月の南部振興議員連盟懇談会で川口議員にご提言をいただき、「奈良県美しい南部・東部地域を県と市町村が協働して振興を図る条例」を提出し、議決いただきました。

③この条例では、南部・東部地域が、奈良県の発展の歴史で果たしてきた役割、また、食料、木材、水及びエネルギーの安定的な供給や魅力ある生活文化及び歴史文化の継承など、重要な役割を担う地域であることを認識しています。併せて、今後も南部・東部地域の持続的発展が県全体の発展のため必要不可欠であることを明言しています。

④今後条例に基づき、県と市町村が共通の目標を定め、協働して南部・東部地域振興施策を総合的かつ計画的に進めていきます。

⑤取り組みを進めるにあたり、県と南部・東部市町村が協議する場として、6月に「南部・東部サミット」を立ち上げました。

「南部・東部サミット」では、条例の5つの基本的施策である「産業の振興及び雇用の創出」「住民の福祉の向上及び生活の安定」「防災・減災対策の推進」「魅力ある地域づくりの推進」「デジタル社会の形成の推進」について、検討を始めました。また、高度な知見の収集、広いアイデア募集、更には民間投資喚起などのため、コンソーシアム形式の実践的な勉強も行いたいと考えています。

⑥今年度の具体的なテーマは、市町村の喫緊の課題である「市町村における職員の人材確保・育成」「南部・東部地域のゲートウェイ拠点づくり」「南部・東部地域の地域デジタル化推進」の3つとしました。

⑦本条例により、南部・東部地域の役割や歴史・文化と振興の重要性を全県民が再認識し、県と南部・東部地域の市町村、また、関係する市町村がともに力を合わせ、奈良県の一体感のある発展につなげてまいりたいと考えています。

川口:十津川村と新十津川町の歴史と文化を、現在、どのように学校教育の現場で採り上げているのか。また、両町村の児童生徒の交流の現状、併せて十津川高校の現状を伺いたい。

教育長:①郷土十津川を大水害の被害によりやむなく離れ、新天地を北海道に求め、有数の穀倉地帯の礎を作り上げた新十津川町の人々の歴史を学び、その思いや願いに触れることは、児童生徒が郷土に対する愛着や誇りを育む上で、生きた教材になると考えています。

②県教育委員会では、新十津川町の人々の十津川村への思いなどを考えさせる郷土資料として県独自で作成した「つり橋の村」の活用を広げるため、平成29年度に作成した教員用の「郷土学習の手引」に、現在掲載しています。ねらいや学習の流れなどを詳細に示し、教員研修を通じて、公立中学校の教科横断的な授業での活用を促しています。

また、新しい取り組みとして、教育研究所が月1回発行するウェブマガジンの10月号に読み聞かせの推薦図書として「北へ行く旅人たち(新十津川物語1)」を取り上げる予定です。今後は、小学校の初任者に読み聞かせの実践研修を実施し、読み聞かせを通して、教員にも子どもにも十津川村と新十津川町の歴史や文化を学ぶ機会にしたいと考えています。この取り組みは、奈良市出身の指導主事が小学生の頃、「北へ行く旅人たち」を当時の担任に読み聞かせてもらい、40年後の今も強く印象に残っていることが契機となり、実施しようとするものです。

③本年度の児童・生徒の交流の現状ですが、十津川中学校は5月に新十津川町への修学旅行を予定、また、新十津川町は小・中学生30名程度が7月に十津川村を訪問する予定でしたが、いずれも新型コロナ防止のため中止となりました。

④今後は両町村の小中学校で、修学旅行などの代わりにオンラインでの交流学習に取り組む予定です。学校間の交流学習で中心となる活動には、交流体験、実践報告、共通活動などがあり、県教育委員会では、それらの活動に対して児童生徒の絆がより深まるよう、必要に応じて助言や支援を行っていきます。

⑤また、十津川高校の現状に関しては、地元の十津川中学校と連携型の中高一貫教育によって地域の課題研究に、現在取り組んでいます。今後は小中高を通じてオンラインを活用した探究的な交流学習実施など、地域に信頼される高校づくりを進めていきます。

〈2〉漢方のメッカ推進プロジェクトについて

川口:生薬の生産促進に対する支援と、製薬業者への支援とをバランス良く組み合わせ、生薬の生産振興と製薬業の振興の実現に向けた取り組みを具体的に進めていくべきと考えるが、知事の所見を伺いたい。

知事:①「漢方のメッカ推進プロジェクト」は、奈良県にゆかりの深い漢方について、生産・研究・販売までの一貫した体制と漢方の産業化を目指す試みです。平成24年に立ち上げ、本年で10年目を迎えます。

②まず、生薬の生産促進ですが、検討の結果、大和トウキをプロジェクトの最重点作物に位置づけました。生産量を増加させるため、栽培マニュアルを作成しました。それを生産者に周知・栽培指導することで、栽培技術の向上に取り組んできたところです。

その結果、生薬となる根の部分の生産量は、プロジェクト開始前は年間1・3㌧でしたが、令和2年は2㌧に増加。また、生産戸数は53戸、面積は約3㌶(315㌃)です。

③しかし、県内製薬企業からのニーズなどに応えるだけの生産量を確保するためには、まず収益性を向上させる必要があります。

そのため、農業研究開発センターでコスト低減に繋がる単位面積あたりの収穫量の増加や、省力化を重視した新たな栽培技術の研究に取り組んで、効率的に生産できる仕組みを構築していきたいと考えています。

④次に製薬業の振興ですが、薬事研究センターで、生薬の優位性が発揮できる成分分析や加工技術などの研究を進め、その研究成果を製薬企業へ移転することで、製品開発を促進しようとしています。大和トウキ以外の生薬も含め医薬品10品目、医薬部外品5品目が製品化され、その約8割が既に販売されています。

また、開発後も製剤の品質確保に係る技術支援などを実施し、製薬企業をサポートしております。

⑤引き続き、大和トウキなど奈良県産生薬を活用した医薬品などの製品化が更に進むよう、生薬の優位性が発揮できる成分分析や加工技術の研究に取り組んでいきたいと思っています。加えて、県内や首都圏での販売会や漢方に関するセミナーの開催、動画配信など「奈良のくすり」のPRなどにも努めていきます。

⑥議員ご指摘のとおり、県内産の生薬が製薬企業をはじめとする需要者のニーズにマッチするためには、供給量や価格面で厳しい課題があります。こうした課題を丁寧に、かつ粘り強く解決していくことで、生薬生産や製薬業の振興に繋がるよう、今後の取り組みを精力的に進めていきます。

〈3〉薬事研究センターについて

川口:令和2年に薬事研究センターの耐震工事を凍結した経緯と、その後のセンターのあり方についての検討状況を伺いたい。また、今後、このセンターがどのような役割を担い、いつ、どのくらいの時間をかけてセンターの改築を行うのか、所見を伺いたい。

知事:薬業振興は、奈良県にとってとても大事なことと考えてきました。その中で薬事研究センターは、製薬企業の技術指導や新人教育などの人材育成、共同研究による製品開発支援など、本県の薬業振興に寄与してきました。

②薬事研究センターの建物は老朽化し、私は耐震改修だけで良いのか、むしろ薬業振興の中心組織として育てる必要があるのでは、と思ったところです。一旦工事を実施すると、その後10数年以上の間現状の規模のまま、また、現状の施設のまま使用することになります。今後の奈良県の薬業発展のためには、センターの役割をどのように強化するのか、今後のセンターの担うべき役割を確たるものとして施設のあり方を検討する段取りが必要ではないかと考えました。更に、センターの人材や設備の充実が必要と考え、薬事研究センターの役割の果たし方について、根本的議論が必要と考えています。

③このような経緯から、奈良県の薬業振興を考えるにあたり、本年7月から8月にかけて県内外の製薬企業、医薬に関する有識者を招いて、私も参加して、有識者ヒアリングを実施しました。当ヒアリングでは、有識者からさまざまな貴重な意見を頂きました。

まず、具体的には製薬業界の現状として▼県内医薬品製造販売業者(51社)の全てが中小企業で、受託製造事業者が多いが、受託するには製造設備の充実や医薬品の品質確保体制が必要であること▼医薬品など製造業の規制強化への対応が現状では難しいこと▼これら諸課題への対応に、薬事研究センターの技術支援がぜひ必要であること。

漢方関係では▼「漢方ゆかりの地」の強みを活かした新しいブランド化が図れないかどうか▼良質の生薬生産を省力化する研究は可能かどうか―など貴重なご提案をいただきました。

④それを具体化に繋げる必要があります。この有識者ヒアリングに続き、10月中に、薬業にかかる懇談会を立ち上げる予定です。

この懇談会では、奈良県の薬業振興の分野で、例えば品質確保体制強化のための技術支援や相談体制の整備について、また、研究開発では製剤化研究への取り組み方などを整理していきたいと考えています。時間はかかっていますが、この際、奈良の薬業振興に役立つ良い結論を出して、奈良の薬業振興を実効のある発展に繋げていきたいと考えているところです。と質問に答え、それに対し川口県議は具体的なゴールを設けるよう要求し質問を終えた。

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